はじめて彼をみたのは、渋谷駅ちかくの電話ポックスで、それとんだな。 / ワリー街の浮浪者よろ いうのもわたしが痴漢に追いかけられたからだ。 先客がいた。彼に気づかなかったのは、く 当時のわたしよ、、 をしまよりずっときれいでかわいらしく ( もちろしく、なえきったような姿勢ですわりこんでいたからだ 9 わたしが ん ! ) 、その年齢にふさわしい不良性があった。世界中の男の気をひドアをあけると、ゆっくりと顔をあげた。夕暮れのなかで、生気の きたい、みたいな意識でいつばいだった。だからアパズレふうとい ない白目がちが、侵入者をじっとみつめた。 , っても、たいしたことはなく、上下三枚のつけまっげと前に深いス 「あのね・え」【 リットがあるタイトスカート、十三センチのハイヒールでくねくね わたしは、例のごとく、・ハカ声をはりあげた。 あるくのが、 , せいいつばい。友たちは、わたしのことを、「金髪オ「電話つかいたいの。わるいけど」 ハケ」とよんでいた。それでも駅のまわりを一周すると、かならす反応なし。 七人以上の男に声をかけられた。いちばん多くて十四人。 砂色の瞳は、幼児がはじめて外界を認識したときのように、突如 とびこんできた女の子を ( そのころのわたしは、女ではなくて、ま 「ねえ、ちょっとお茶でものまない ? 」 たいていは、おずおすとこんな調子。 ( ひっかけやすい女とおもだ女の子だった ) 熱心にながめまわす。 それとも、あんたが、あの男を追っぱらって って、みくびってやがる ) 男の視線をあつめたいくせに、わたしは「どいてくれない ? そんなふうにおもう。同時に、軽蔑と奇妙な怒りに似たものをあじくれるっていうわけ ? 」 わう。 ( あたしや、そんな女じゃないよ。まあ、そこいらで立ちん わたしはがなりたてた。 ぼうしてて、せいぜい根気よく別ロでもあさるんだね ) かんしやくをおこして、またしてもそこをとびだし、気ちがいじ で、わたしは ( ふん ) という感しに鼻先をあげて、さらに気どりみた高さのヒールをものともず走りに走った。トレーニングパン に気どって、脚をはやめるのだった。 ツだったわけじゃないから、すぐに息切れをおこし、歩道橋の下で よ、つこ 0 立ちどまった。靴がこわれそうな気もして。 その日は、いつものようによ、 .- ・、、 ふりかえると痴漢はいよ、。 かなりしつこく、うす気味わるかった。そいつは、いつまでもい かわりに、電話ポックスの男が、恐怖映画でよくみるみたいに、 つまでも、くつついてくるのだ。「よう、ねえちゃん、つきあえよ。 いいながら、お気楽そうにしんぼうおどろくほどちかくに迫っていた。わたしは、ギャッとちいさな悲 三十分でいいからさ」なんそと 鳴をあげた。 づよく追ってくる。目だけはガラス製みたいに無表情で。 速足になっても、かけだしても、喫茶店へばいっても、あきらめ彼はしずかに、いくらかやさしいふしぎそうな顔をして、そこに る気配がない。わたしは東映のまえを走りぬけ、電話ポックスに逃立ちつくしていた。 「どうしたの ? 」 げこんだ。一一〇番しよう、とおもった。けっこう気がよわかった 3 け
あまいお話 鈴木いづみ 画村上遊 こ第 4 一 3 こんな男に出会ったら、 ご用ーむ、 ! 「ご用′む ! 距離も時間もなんのその 壁まで抜けて会いにくる
スペース・オケラが、ついに耐えきれず両手を二十センチばかり テレビから流れてくるアナウンサーの声を耳にしながら、俺もま 開きながらうめいた。そのとたんに、皿とおからの攻撃がストップた、恐怖のスペ 1 ス・おなら攻撃にぶつ倒れた。蘭花ちゃんとお母 し、鼻のあたりまで積もっていたおからと、割れて飛び散っていたさんの倒れている、すぐ脇だ。 お皿のかけらが、まるでウソのように消滅した。 かすむ目に、ふたりの盛りあがったムッチリ、プリプリの超ポイ 「やったそ ! 江久曾さん。さすがのスペース・オケラも、このこ ンが映った。 とばには弱いんだ」 そうだ ! : ェロチックでなるべく大きな対象物・ : これ 俺は江久曾と顔を見合わせ手を握り、失神している蘭花ちゃんとだ ! これならビッタリだ ) お母さんのそばへ走り寄った。だが、これは失敗たった。 俺は遠ざかっていこうとする意識の中で、最後の力をふりしぼっ 「うぬ、よくも俺の弱点を見抜いたな。さすがは江久曾だ。しかていった。 し、戦いはこれからだそ ! とっておきのスペ・オケ魔術をかけて「オケラ、オケラ、蘭花ちゃんとお母さんの・ハスト両方合わせた やる ! ウリャーツ、チョェッ 必殺〈スペース・おなら〉をら、ど 1 のくらい ? 」 こ、このくら : : : 」 受けてみよ " こ スペ・オケがガウンのすそをまくった。陬さんの毛むくじゃらの スペース・オケラの苦しみにうめく声が、遠くで聞こえるような 尻がでる。俺は思わず「オェッ」と声をだした。スペ・オケの指が気がした。 ふたたび印を結ぶ。 ゅうべミミズの鳴く声聞いた 「まずい、やつが印を結べないように、あのことばを。ェロチック ミミズじゃないよオケラだよ で、なるべく大きなものを対象にして " こ オケラな・せ鳴くあんよが寒い 江久曾が、あわてていった。しかし、遅かった。 寒いはずだよはだしだよ ・フォー ・フォーツ " オケラにあげましょ福助足袋を・ : 周囲が黄色い有臭ガスに包まれた。ものすごい臭さだ。鼻がとれテレビのンングを聞きながら、俺は完全に意識を失った。 てしまうのではないかと思われる強烈な刺激が、鼻から脳天に突き ス。ヘース・オケラか ? 雪之丞か ? 果して勝利はどちらの手 抜け、目が激痛に襲われ涙がポロポロこぼれ落ちた。江久曾が木偶にもう、いいかげんよせばいいのに、物語は次回に続く気配を 人形のようにぶつ倒れる。そのからだが、テレビのスイッチに触れ残して終りを告げる。寄絶 ! 怪絶また壮絶 " " ( 目次およびタイトルの「決戦 " 【スペース・オペラ」は「スペー 「 : : : では、続きまして〈なっかしの 0 ヒットソング特集〉第五ス・オケラ」の誤りです。故意にやったのだからおわびはしないけ 曲目は、福助足袋の唄です : : : 」 ど、訂正します。作者 ) 3